なかなか見つからなくて3冊読み終えるまでかなり時間かかってしまいました。
田舎町のお金持ち三村家の次男坊・弓をずっと好きだった幼なじみの敏は、弓の兄である角と関係を持ってしまい、ここから焦らしまくったつかず離れずが続きます。
この“田舎の金持ち”という設定、BLにありがちな身分差とか非常識を売るための肩書きではなくて、全編で角と弓の立ち位置に関わってくる大事な要素です。これが最も素晴らしい点でした。ゲイだということで町中から非難され田舎を離れた角の姿や、東京の暮らしに馴染めず肉体的・精神的に衰弱していく弓など、しんどい話が続いていって最後のハッピーエンド(ですよね)に繋がるミラクルもまたいい。
あくまで僕の印象ですが、BLで田舎が描かれるとき、その多くは「のんびりした」「懐かしい」「純朴な」等の形容詞が似合う舞台になっていると思います。でもこの漫画は現代の田舎町の実態(に近いもの)を描くことに躊躇っていません。「変わらないものなんてない」というのが大まかなテーマなんだと思いますが、とりあえず終盤は敏がめちゃめちゃ大人になっていて偉いです笑。
但しひとつ気になるのは角。弓も辛かっただろうけど、一番孤独だったのはやはり角だと思うし、しかも明確な救済が描かれていないと、なんだか可哀想なのですが……。
この方、絵がいいですね。書き殴ったような怖いタッチなのに、気が抜けているSDは落書きのようで、重いテーマを読み易くしてくれました。他の作品に比べるとエロも少ないし(他作がドエロなだけ?)、心象を丁寧に描いたBLが読みたい方はぜひ!