素敵な呪文

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。since 2006.3

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。
80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。
since 2006.3


僕の知るあなたの話/鈴木ツタ

僕の知るあなたの話 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)
ヤクザの渋沢の家に急に訪ねてきた高校生。昔遊んだ女の息子である波亜人がなぜ今更懐いてきたのかわからぬまま、母親から受ける暴力の痕を見ては、放っておけない気持ちになる。
 申し訳なくも、この方の人気は全て絵柄によるものと思っていました。代表作の『この世異聞』など世界観が受け付けないため完全にスルーでしたし、そもそもあまり中古で見かけない漫画家なので……。
 しかし。この本はすごく良かったです。表題作を含む中編、波亜人と渋沢の心の交流が切なさを増していくのには引き込まれます。同級生モノの「ソテードオニオン」はかわいらしい。「声が届くのなら」は高校生の翔太とその守護霊を名乗る侍・ゼンゴとの奇妙なやりとりが楽しいです。感応が希薄な男が会社の後輩に告白されて始まる「かみさまの目をぬすんで」は淡々とした展開の中に、他人に惹かれていくごく普通の感覚を描きこんでおり、受攻などなくても面白かった。全体的に良質なBLでまとめられていて、作者の実力を感じました。あとがき漫画がまた最高。主張しすぎないあとがきって好きですね。