素敵な呪文

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。since 2006.3

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。
80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。
since 2006.3


マコトの王者/福井あしび

マコトの王者(赤)&(青)(4) (ゲッサン少年サンデーコミックス)

町工場で働く不良上がりの若き挑戦者・大地真。政治家の家に生まれ、全ての名声を手にするチャンピオン・天堂誠。2人のマコトは試合中の相打ちをきっかけに中身が入れ替わってしまう。

 まず結論から書きますが、これものすごく面白いです。題材や2人の境遇などありふれた設定に見えがちですが、それを凌駕する筆致と物語の疾走感。刊行形態も大地Side(赤/見た目は天堂)と天堂Side(青/見た目は大地)の2冊発売というかなり本気な扱い。これで面白くないわけないと言い聞かせて買いましたがドンピシャでした。幼稚さがある絵柄も回を増すごとに迫力がついてきて引き込まれます。
 2人が一緒にいる時間が極めて少ないのが特徴。普通入れ替わりモノというと、同じ環境でお互いを演じなければいけない中で生まれる齟齬などがドタバタの原因になったりして展開するものですが、大地と天堂は互いの身体で生活することになっても“なりきり”などはせず、ありのままでひたすらボクシングに突き進みます。これがいい。
 周囲の人間が入れ替わりに気付かないことも「転落した王者」と「新王者の風格」みたいなもので納得できるし、そもそも天堂が家族と疎遠だったため、大地の行動は厳格な母をして「大人になった」とまで言わしめます。*1

  ギャグ担当の天堂弟やブチ切れ連発の許婚まさみ、大地の彼女カーコら、脇役陣も存在感は抜群。特に天堂側のトレーナー町村(メガネ)はMVPと言える素晴らしいキャスト!天堂と大地の入れ替わりをいち早く受け入れ、天堂を慕う一方で、かつての憎き敵だった大地の人柄を認め、トレーナーとして「天堂復活」と「大地の成長」に大きく助力していきます。他にも天堂の父や恩田会長など曲者の大人も勢揃いして、2人の物語を賑やかにしています。うわーこれ、ホントに何かのきっかけで売れて欲しい。キレイに完結してるし、絵に抵抗ある人もいるでしょうけど兎に角1巻(2冊)をぜひ読んでみてほしいです。

*1:もう少し連載が続いていれば、大地家三姉妹の誰かが正体に気付くとかあったかもしれませんね。