素敵な呪文

感想文

何かいいものを求めてます。それらの所感を投げ込みたいときに使う場所です。
2008年12月にいったん終了。1年後の12月に、コンセプトを改めて再開してみました(過去記事はそのままです)。よろしくどうぞ。
書店員を経て出版社に勤める漫画スキー(特にBL)。
その他頻出ネタとしてはTM NETWORK、90年代ビーイング、ジャニーズなど。
時事ネタも何かどうしても不特定多数に向かって叫びたいような出来事があれば書いています。


今年読んだBL漫画ベスト10

【10位】兄弟失格それ上等/中川カネ子
兄弟失格それ上等 (H&C Comics ihr HertZシリーズ)兄弟失格それ上等(増) (H&C Comics ihr HertZシリーズ)
 この人の漫画すっごく面白いんだけど未だに市民権弱い気がする。なぜ?絵も個性あってキャラの区別つきやすいし、容赦ないエロ(特に性器)もBLファンウケするし。まぁ『ドラトラブ』の衝撃を越えられてない感はあるかもしれない。
 本作は義兄弟モノ。普段は腹黒イケメンの芹が当て馬含めた脇役に嫉妬してやきもきする姿が可愛すぎ!風介も開発されて乙女化するだけじゃなく、芹に対して兄貴っぽくなっていくのもまたいいですね。リアル双子の僕は兄弟BLにどうしても苦手意識があるのですが、たとえ恋仲になっても兄弟としての在り方が保たれてるようなBLは好きです。他にも登場人物の個性が光る作品。中川さんは今のところ地雷もないし暫く読み続けるな。


【9位】テンカウント/宝井理人
テンカウント (5) 通常版 (ディアプラス・コミックス)テンカウント(6) (ディアプラス・コミックス)
 Dear+のドル箱と呼べる名作ですが、潔い幕引きには拍手。始まった頃は僕がまだ書店に勤めてて、エンドで展開されていたので最初だけ読みました。完結を知り全巻集めたら、えっ宝井さんこんなエロ寄りの人なんだって驚いたなぁ。しかもこれが大ヒットするなんて東京都の不健全図書指定は意味あんのかなwww
 うーん、好きなら汚されてもいいってこと?潔癖症にもう少し詳しければよかったのかな。言葉巧みに城谷を掌握していく黒瀬はカウンセラーというよりサイコっぽくもある。でも10カウント超えるレベルを「したい」「触れたい」って本能でクリアしていくのがたまらんですね。城谷の同僚もナイス。


【8位】トワイライト/西本ろう
トワイライト (Canna Comics)
 本当にデビュー作?ってくらい完成されてる新人さん。絵柄はもちろん書き文字とか台詞回しとかアングルとか女子の顔とか、どう見ても青年誌の体。それだけに漫画としての完成度はかなり高いです。嬉しいのは、ちゃんとBL機能(?)もフル搭載されているところ!エロがえろい!! 部室で初めてキスする場面とか裸でもないのにめっちゃ扇情的でね。
 1冊丸々同CPで味わえたのも良かった。ストレートな純愛で行きそうだった眩しい高校時代、彼女ぶったクソアマ朋美の嫌がらせが引き金になり大事故に遭う稜(攻)。陽平を守るためだけに、本音を圧し殺して生きようとするのが男らしくもあり面倒でもあり。陽平は尽くし受なんですが自己評価低すぎてどんどんおかしな方へ進みます。両片想いというかすれ違いは好みのドストライクなのですが、お互いの誤魔化し時期がなかなか辛くて……陽平の告白、稜の涙、最後ハッピーエンドまでは感激でグッと来ちゃいました。
 にしても朋美ウザすぎ!最近のBLに出る女の子って清々しい子が多いから、こんな憎たらしいキャラは久々に見ました。


【7位】工藤先生のマジェスティックデイズ/藤峰式
工藤先生のマジェスティックデイズ (BABYコミックス)
 今年一番笑えたアホエロです。ヤンキー×教師で主従関係があって当て馬がいて、って普通に進めても十分腐女子に喜ばれると思うんですよ。それが受をドM変態教師にしただけで全設定が真逆に作用してしまうwwwもう全てのリアクションがなんじゃそりゃです。日南くんの隠し撮り写真を部屋に貼りまくって、それを見ながら壁に設置したディルドで犯される、という宇宙的なオナニーに興じます。……あのー、これは活字で読むよりも、絶対に漫画で見た方が100倍楽しいと思う。書き下ろしで日南くんも「こんな奴に惚れる俺もどうかしてる」みたいなことを言うくらい。この人の本は来年もっと読みたいな。


【6位】昨日をもう一度/らくたしょうこ
昨日をもう一度 (H&C Comics ihr HertZシリーズ)
 一冊1CP。さすがらくたさんはスパイスが効いてる。高校時代の接点が殆どないからお互い「くん」付けなの萌える!高森は恋心から当時の僅かな関わり合いも鮮明に覚えているんだけど、今の神藤を見てため息をついてしまう。こうなるの解るなぁ時間って不思議ですよね……。けれど過去の幻影に囚われてなし崩し的に身体を結ぶうちに、気付かず惹かれあっていたというのが新鮮だった。恋に気づいた神藤が別人のようにガツガツしたキャラになるの良かった。らくたさんの描く赤面は長年ハマってます。あとこの話、神藤と恋仲だった先生(女性)の存在がデカい。女って強かだなぁ、と改めて思う。


【5位】ラムスプリンガの情景/吾妻香夜
ラムスプリンガの情景 (ショコラコミックス)
 モブ山モブ谷のギャグBLで名を馳せた吾妻さんですが、これは1冊丸々80年代の洋画味溢れる生真面目BLです。本当に映画みたいなんですよ。粗筋軽く触れるつもりでしたがAmazonの商品紹介文めちゃめちゃキレイなのでそちらを読んでください。
 片方の存在が片方の人生を更正していくような関係のBLは本当に良い。ラストまで読んで判るカットバック構成なんか素敵すぎるし、ほろ苦さのあるまとめも余韻があっていいですよね。
 異国や宗教観が基軸の物語は覚えることがどうしても多くなりこれまた苦手なんですが、小難しい設定を中和してくれる粋な台詞回しと人間ドラマ。絵もレトロでこの漫画の空気作りに大きく貢献していますね。『このBLがヤバい!』1位おめでとうございます!



【4位】パブリック・セックス/理原


 近年のエンタメにおけるヒット要素(?)「どんでん返し」がこの漫画のキモですね。お薦めされなければ読まない絵柄だったけどいやー最高!伏線がよく出来てる。場面転換が起こる前、必ず何かひとつ「あれ?」って不穏なシーンがある。それがどんどん種明かしされていって、おいおいおいって呆気にとられてる内に、キャラが勝手に悦に入ってるというか。
 評判のエロもとにかく凄い。ひとつのアングルに色んな小技が盛り込まれてて、映像的というか躍動感がある。音とか本当に聞こえてきそう。BL読む男だったら唾飲み込むくらいのエロですよきっと。設定上、エッチの半分は青姦ですが両想い発覚後のSEXが一番良かったです。ストーカー部屋が怖すぎる!そしてラストの征はもっと怖い!
 arcaコミックスの修正強気だなぁ。作家によるのかもだけどBABYやCannaにひけを取らないガッツリ描写。今後も頑張ってほしい。


【3位】カラーレシピ/はらだ
カラーレシピ(上) (ディアプラス・コミックス)カラーレシピ(下) (ディアプラス・コミックス)
 CIEL連載時は角川のBLが嫌いなのもあって未読だったのですが、上下巻ならいいかと予備知識ほぼナシで買ったらまー凄い話でした。終盤身体震えた。福介がサイコパスじゃなければメンタリストと呼ばれるんだろうけど(?)執着もここまで来ると病気だな。どう考えても笑吉にハッピーな未来が待ってると思えないのですが、福介の言動ひとつひとつに絆されちゃった彼も彼なんですよね。
 人気キャラ(だよね?)の龍来がファインプレーを連発。時々怖いんだよなぁ頭が良いだけじゃなくて福介と笑吉のすべてを見透かしてる雰囲気が。自ら「自分もあの男と同類」って言ってるし。何も描かれなかったけど美門さんも、実は全部見抜いてるのかな?って思わせるようなリアクションするんですよね。そんな感じだから終いには生意気さとり世代風の新キャラ一祝が唯一の癒しみたいになってるwww


【2位】ひだまりが聴こえる/文乃ゆき
ひだまりが聴こえる-リミット-1 (Canna Comics)ひだまりが聴こえる-リミット-2 (Canna Comics)
 1巻(無印?)の時、設定や粗筋はいいんだけど絵がどうしても好みじゃなくてスルーしていました。けど尋常じゃない話題性につられてわざと『幸福論』から読んだら、あれ絵かなり整ってる!で予想通り思いっきりハマりました。
 手話って目に見える会話でありながら、漫画というメディアで表現するのは結構難しいよなと前から感じています。この作品が優れているのは、聴覚障害には様々なタイプがあることをちゃんと描いてるとこだと思う。何ヘルツまで聞こえるかでも声量に違いがあるし、会話が聞き取れても心塞いでしまうし。そういうところを素通りしていなくて、障害がBLのためのネタになっていないところに好感が持てました。『リミット』では太一が聴覚支援関係の会社に勤め始めて、その周辺の実態がじっくり描かれてます。こういう丁寧で真面目な漫画がやっぱ人気出るんだよ。


【1位】オレとあたしと新世界/古宇田エン
オレとあたしと新世界2 (enigmaコミックス)オレとあたしと新世界 3 (enigmaコミックス)
 今年はこれに始まりこれに終わったと言ってもいいので文句なしの1位。新人なのに絵が上手いって人はいっぱいいるけど、この人は全てが凄い。既に大物の風格さえある。
 しのぶの事故から10年寝たきりだし、意識戻る→リハビリ→退院→店開く→と時間がどんどん進むんだけど、当初の設定とか謎とか全然置き去りになっていないし、ギャグ絵の加減もいい。またこの時間軸に合わせて数々の素晴らしい脇役がとっかえひっかえ登場します。マコの会社、ゲイバーの仲間、病院関係者、新世界で働く若手、兎に角飾りつけみたいな人がいなくてイキイキしてる。
 エロというエロは最新刊で漸くお目見えするのですが、いやータチネコこうなんだ!って萌えたなぁ。おネエ攻は苦手だけどガチムチ(?)ノンケ受が!たまらん!!
 様々な困難を乗り越えてきたように見える二人ですが、いよいよ深層というか本質的な問題にぶつかってしまうところでヒキ。次巻で完結とのことです。


 今年も好きなBL漫画がどんどん増えて嬉しい。Twitterやpixivでも創作BLはそれなりに見ているし、実際面白いんですが、書籍やっぱりいいですよね。30代になった野郎がいつまで読むんだBLを、と時々考えますが、こういう感動ができるうちは正直に読み続けたいっすね。