素敵な呪文

感想文

何かいいものを求めてます。それらの所感を投げ込みたいときに使う場所です。
2008年12月にいったん終了。1年後の12月に、コンセプトを改めて再開してみました(過去記事はそのままです)。よろしくどうぞ。
書店員を経て出版社に勤める漫画スキー(特にBL)。
その他頻出ネタとしてはTM NETWORK、90年代ビーイング、ジャニーズなど。
時事ネタも何かどうしても不特定多数に向かって叫びたいような出来事があれば書いています。


野ばら/雲田はるこ

野ばら (マーブルコミックス)
 このBLがヤバイの上位作品で唯一気になっていた一冊。これはすごかった!! こんな才能溢れる人がBLを描いてくれてるだけでBL漫画の将来に希望が見えます。
 素晴らしいのは、絵柄に漂うファンタジックな空気がネタではなく、本気でやっている点だと思います。だから雰囲気重視で中身がなかったり、セリフやモノローグで空白を埋めたりする漫画と違い、細かいところまで丁寧に描かれています。
 もうひとつ、子どもの描かれ方が大へんリアルに思えました。やもめ男が登場するBLなど今では珍しくないですが、何故か多くは子どもが男子で、しかも遺伝子の影響とも言わんばかりに子どもの将来像までゲイ化している…とか、あるいはやけに物分かり良く男同士であれこれする親に対して悟ったような素振りを見せる…など、そこにいるのはあくまでボーイズラブのためのアイテムに過ぎないわけですが、この漫画は子どもの存在に真剣でした。
 5才の元気な女の子を抱える父親の苦労、子どもが親や周囲の人々に対して持つ感情がしっかり描かれている点にとても感動しました(可愛いのはもちろんです)。何より書き下ろしの結末が拍手もの。このお約束場面で真面目に子どもを描ききったのが素敵すぎます。さりげなく存在感あるおばあちゃんも名脇役ですね。
 いやーこの本、読めてよかった。表題作以外にも小編が2作ありますが、どちらも独特のテーマを扱っており、良いです。BLファンの期待に応え得る描写もばっちりでした。他の作品も絶対読もう。
 実にいい漫画家を輩出しますね、東京漫画社