※『銀のバッチ』『約束』
藤たまきさんはとても好きな漫画家ですが、少年達の痛い部分がテーマになることや、自分勝手なキャラクタ、膨大なモノローグ等もあり、読むのにかなり気合いが要るんですよね。それでも一瞬の情景を切り取る素晴らしさ、幻想的な生活の描き方には強く惹かれてしまいます。
このシリーズは学校のエリートである波手の下に突然現れた天涯孤独な少年・莢と、二人と共に寮で暮らすことになった永江との、所謂三角関係がメインです。ところが流石この方、それだけに終始しません。
最初に解ることゆえネタバレでもないと思うので書きますが、いきなり莢が亡くなる話から物語は始まります。事前知識を全く持たずに手にした本でしたのでとても驚きました。あとはすべて過去の回想で、時間軸もバラバラです。
いろいろ書きたいことはありますが、莢が波手と永江に向ける恋心は特に秀逸です。莢に初めて愛を与えた波手に対しては子どものようにただ恋をし、永江に惹かれていく姿は間違いなく思春期のそれです。この、永江を思う気持ちに沢山の時間をかけていた点が最も感動しました。
いやぁまだまだ名作があるものですねBLも。まだBLが今ほど明確でなかった10年以上も前にこれだけのものを描いたということが凄いです。『約束』は一冊すべてが初単行本化ということで、どれだけ待ちわびたファンがいたことかとつくづく感じました。この漫画を文庫化した出版社には心から拍手を送ります。