素敵な呪文

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。since 2006.3

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80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。
since 2006.3


倫敦巴里子特集

 デビュー本『出張!!敏腕キューピッド』が良かったのでいろいろ読んでみたのですけれど、この作者かなり好きみたいです。なんだろう空気とか間とか、解説できない要素がドツボなんですもう。台詞選びも文句なし。ほんの些細な短編にもダイヤの原石が埋まっていて、真剣に読むとそれはそれはキラキラしてくれる。萌えとかの子ども騙しじゃなくて、あぁ漫画好きだなとか、BL面白いなとか、根本的な感激をしっかり備えてると思うんです。そんな3作(GUSH以外では出さないのかな…)まとめてドン。

 表紙の印象で「ネコ耳とかいらねーよ」などと斜に構えていたら全く違いました。愛した人と生きるため、人間と同じ寿命を持つ“長生きにゃんこ”になる猫がこの話の主役です。設定が素晴らしい。ほどよくファンタジックでギャグも冴えていて、何より説得力のある展開。ライトなBLでこんなに実の詰まった本は貴重じゃないでしょうか。他の短編もいいです。

 この本で注目を集めたそうですが、表題作の10年カップルが楽しいんです実に。爽やかで初々しい青春BLも勿論好きですが、老けこむとかではない、成熟というか…まさに夫婦のような二人の関係に温かいものがこみあげる。
 長生きにゃんこシリーズ(毎回主役が変わります)が半分占めていてこちらも良いです。特に2本目、猫より先に人が亡くなる、というテーマは美事(誤字ではない)。

 着物だから時代モノと思ったら、華道家の兄弟とその幼なじみである呉服屋の息子の物語です。多分初の中編となる表題作。兄弟で取り合い。3P期待したんだけどなー(笑)。
 この本では最後の短編が珠玉です。上司と後輩のオフィスラブですが台詞がもう本当にいい。ぎゅんぎゅん響いてきます。シメもキレイ。
 BLで短編の名手と言えば個人的には三池ろむこ、たうみまゆが抜きん出ていたんですが超えたかもしれません。一度長編を描いてほしいな。