素敵な呪文

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。since 2006.3

日々の感想文。気が向いた時に書き散らしてます。
80・90年代J-POP、7ORDERの話題は頻出。
since 2006.3


今年読んだBL漫画ベスト10

【10位】fill the cream donut/でん蔵

 薦められなかったら読んでない絵柄。線が雑なのはともかく、顔が怖いんですよね(笑)。でも表題作は面白かった!デリボーイに惚れちゃったリーマン・ナオキ(註おっさん)が現実を知って絶望するの辛いけど、去っていった直樹への恋慕が募るレン(攻)のしおらしさでまぁチャラかなと思いました。あまり指摘されてなかったけど、受の欲求に応えていく攻という関係はSMっぽくもある。ご都合主義もある意味BLの王道。この本はエロ描写が本当凄まじいので好きな人はとことん好きでしょう。ひとつひっかかったのが受の喘ぎ。「らめぇ」ってかなり苦手なんですよね…そんな連発するか?
 この表題はどういう意味かと思ってたら中出しのスラングなんですね。今までよく使われてなかったな。


【9位】秋山くん(3)/のばらあいこ
秋山くん3 (マーブルコミックス)
 一緒にいる理由をシバに直接問われても「なんか面白い」とかいうふわっと好意しか伝えてこなかった秋山くんが、涙ながらの告白をしてくれました。そんな感動シーンから一転、退院後速攻ラブホSEXという緩急w 周囲の人々(特に梶原)はもう二人の関係に諦観しつつも寛容だし、ちえちゃんやじおん等の理解者がいるのはやっぱり嬉しい。イチャラブSEX三昧みたいに見えて仄暗さが常につきまとっていた二人だったので、今回の話は大きな転換点でした。
 この作品以降、格差CPはひとつのジャンルにもなりましたが、やっぱり他のそれとは全然違う二人。草壁佐条ぐらい揺るぎないCPに成長してほしいです!


【8位】ササクレ・レクイエム/鹿乃しうこ
ササクレ・レクイエム (バンブーコミックス 麗人セレクション)
 鹿乃さん得意の脇キャラ主役化。前作で晴れて報われた藤野奏と近親相姦していた弟・日向が主人公です。自分から強要したとはいえ実兄との関係がトラウマになっているところに、部活の先輩・絢斗が近づいて、と書くと絢斗がチャラチャラして見えますが、いやそういう部分もあるけどどちらかといえば天真爛漫な純情ボーイで、元来の明るさで日向の闇を丁寧に崩していく。最初ちょっと絢斗のキャラ苦手だったんだけど、日向のぶっきらぼう過ぎる性格と中和されていてなかなかいいコンビ。卒業後二人が成人しても話が続きます。育み愛いいですよねー。鹿乃さんらしいエロもしっかりあって嬉しい。
 数珠つなぎの作品群でありながら、BLのトレンドもちゃんと押さえた物語を描いてくれるところ、鹿乃しうこって素敵だなぁといつも思います。


【7位】絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男/紺吉
絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男 1 (フィールコミックス FC Jam)
 pixivでも読んでたので面白いのは知ってましたけど、あくまでもBLあるあるを漂うような主人公の存在感よ。BL入門の役目もあるかも。で、俺はBLに生きる術を身につけてるから全然平気、みたいな感じかと思ったら、一筋縄でいかないBLの深さに驚いてる素人にいつの間にか成り下がってきてるのも面白いです。そんなんだからBL回避ルートも結構スレスレになってきて、石橋を叩いて渡れていない。一体どうなっちゃうんでしょうか(自分は、この主人公にBL相手は要らないと思います)。
 今回この本を入れた理由は、主人公の弟(綾人)がガッツリBLしてるから。弟は多分総受けポジで、どう見てもフツメンなんだけど愛されてると確かにかわいらしく見える(笑)。書き下ろしで相手の好意に気付いてますから、もう完全にBLスタートしていますよね。これな~続き見たいな~!当て馬可哀想だけど!


【6位】ただれた恋にはいたしません!/らくたしょうこ
ただれた恋にはいたしません! (リキューレコミックス)
 らくたさんの本はどれも好きなんですが、BL界隈ではこの作品でついに注目されたみたいで、初めて重版やドラマCD化しています。イケメン攻×ツンデレ受はいいですね、最近趣味だと気付きましたww それもイケメンがツンデレにハマって下半身のだらしなさとか一掃してお前だけだとかなるタイプのね。今作の高良と恭平はそのど真ん中です。冷静に考えると、女を取っ替え引っ替えするような男に信用なんか無いし惚れる要素が顔とテク以外ない気がするんですけど(笑)、高良の何気ない気配りとか弱味といった表面でない部分を見せ合える距離や関係になったからこそのラブなんですよね。恭平の田舎から来た幼馴染みが怖すぎる…でもらくたさんって悪人を描かないっていうか、これもただのペド変態で終わらせずギャグにするところがらくたさんらしくて好きです。変態のままを好むBLファンもいるだろうけどそれは別の作家で読めば?と思う。



【5位】やましい恋のはじめかた/小東さと

やましい恋のはじめかた (カルトコミックス PLACEBO collection)
 少しレトロ気味な絵柄やふんだんなエロ、幼馴染年下攻とどう考えても好きな要素しかない。その上、デビュー本なのに初回冊子付とか売り出すぞ感全開の出版形式とかね、期待もしますよね。そこにしっかり応えてくれてます。前半後半で攻・春の態度ってかキャラがかなり変わって見えるのですが、本当は純粋素直が地であって、相当ムリをしてたんだなってのが伝わります。健太郎(受)の葛藤の描かれ方めっちゃ好きでしたね。本心では春に惹かれていながら「兄弟のよう」からはみ出したくなくて、流されSEXする自分をギリギリでとどめようとする切なさ……。割ときっちりした修正だけどこの性器描写は多分好きなやつだわw ただ!深夜バスの座席でエッチはさすがにバレますって!


【4位】ぼくのカレシのすきなひと/リッケン
ぼくのカレシのすきなひと (バンブーコミックス moment)
 米鞍賢五の連載再開&単行本化を待っていたら全然違う名前でもっとライトなBLを描かれていました。これがね絵柄やコマ割りやアングルとかもうさすが!BL相関も素晴らしい。まるまる表題作。もともと付き合ってる高校生CPの攻が本当は実兄を好きなことを受にバレるんだけど、二人とも悪い暗いほうに行かないのがいい。攻は肉親に欲情する自分にめっちゃ罪悪感を抱いて生きてきたため、それを受に正面から指摘されて固まってしまい、自分に懐かなくなった受にさらに絶望。でもそこでちゃんと受に向き合ってくれた勇気には漢気も感じて。それ以上に漢気見せるのが受。容姿も口調も中性的な受が、攻の心の揺れを目にして、厳しくしつつもそれを共有しようとする健気さや芯の強さが実に清々しい。この二人にはずーっと一緒にいてほしいなと心から思いました。こういう誰も傷つかないBLがやっぱり好きなんだよなー。たまには暗いのもいいですけどね。


【3位】九条せんせいの言いなり/たらふくハルコ
九条せんせいの言いなり (BABYコミックス)
 今年は新しい作家が多めでしたが、一番好きなのがこの人。絵がホントに好き。あまりに気に入りすぎて同時期に出た『ロマンチックじゃモノ足りない』との連動特典小冊子を申し込み、滅多に買わないDL同人も読みました(ゆうり可愛かった!)。
 これは無理矢理まとめると作家(もちろん九条せんせい)×編集・成川のソフトSM絆されラブ(?)。成川は精力薄めの凡人なんだけど先生に虐げられる形で興奮を覚えてしまい、何度も身体を重ねるうちに先生の闇に寄り添っていくという……えー、ここまで書いて気づいたけど、この手のBLが僕のどストライクなのかもしれん……。「割とムリヤリな始まりから、流されてるうちに攻の本当の姿が愛らしくなってしまう受、そんな受に攻も心を許し始め……」みたいなやつ!そんなんばっかやん今年!!
 話が逸れましたが、物語やネームの面白さは当然として、この漫画はエロがすっごく良いです。道具が苦手じゃなければ絶対気に入ります。まぁ僕は成川が先生との最初の情事を思い出して風呂場でオナニーしてるとこが一番好きですけどね(?)。
 

【2位】この背中に爪を立てて/西本ろう
この背中に爪を立てて (on BLUEコミックス)
 絵が細かくて劇画っぽいんだけど思いっきりBLです。テーマががっつり不倫なので賛否が別れるタイプの物語ですが、なんでそうなるんだよ最悪!という感想は見かけなかった気がする。そのくらい上手にまとめている。恐らく、この関係は許されないと解っていながら無視して暴走するような話じゃなかったからじゃないかな。本当に別れるかと思ったもんなってそれじゃBLじゃないですね(笑)。攻が男くさくってか人間くさくなっていくのがきっちり描かれていくので、なんでお互いに惹かれたのか解りやすいのも良かった。『トワイライト』も好きな話でしたが、こちらはその何倍も台詞が練られていて完成度高かった。いま連載掛け持ちしてるほど人気なのも頷けます。今後さらに飛躍する漫画家さんでしょう!


【1位】ワンルームエンジェル/はらだ
ワンルームエンジェル (onBLUEコミックス)
 うーんどうしても1位になっちゃうな……またはらださんが1位になるとアレだから敢えて下げようかとか思うんだけどそんな操作を思いつくこと自体がこの作品の非凡さを裏付けてしまってるし、やはりいいものはいいと素直に選んだベストにしたいので、ここは1位です!もうしょうがない!ここしかない!
 「止まり木」の時にははらだギャグワールドの1つに過ぎない短編だったのが、リメイク連載が始まったと知った時から、これは何か強烈なメッセージがあるに違いないとは思いました。うまくまとめられないんですが、それをドラマ豊かにちゃんと描ききっていること、魅力的なキャラのおかげでBL風の萌えもそこそこ担保されていること、そして物語を締める数々の「本の」演出に脱帽しきり。あと「BL臨界点!」というコピーの秀逸さね。僕の考えるBLはつまるところ人間愛がテーマのファンタジーで、「女子向けのエロ漫画」では決してない。それをBLの外側まで限りなく寄せてきた、まさに珠玉の作品です。
 現実はクソみたいなことも山ほどあるけど、世間や社会のせいにしてるうちに終わってしまったら虚しすぎる。たった一人いるかいないかで自分達の生活っていくらでも変わるんですよね。この漫画は今現在のBL界で主に描かれてることを飛び越えて、人生とか生命の実状を巧みに描いてくれてます。性描写はありません。これを読んだ上でそういうのを二人に求める人もいないと思うけど。映画化希望!!



 今年は精神的にも持ち直したので、ここ数年と比べてBL漫画を読んでいても感動が深かった気がします。同人誌もいくつか買ったし。ハズレに出会うことが普通なくらい玉石混淆の業界なのに面白い作品ばかり読めてるのはすっごく得した気分になります。来年もそうありますように。