映画「冬の蝉」をめぐるあたりの話が無性に読みたくなって、数冊再購入しました。これ、僕がBLを本格的に読むようになった記念碑的な漫画です。絵は苦手なので作家読みはしませんが、春抱は別格。
芸能界が舞台のBLは他にもあるでしょうが、ワーキングとしてこれだけしっかり描いたものは無いんじゃないでしょうか。芸能界の表裏、渦中の人間ドラマが迫力をもって描かれています。
もちろんBL面も全く遠慮のない描写です。二人が出会いくっつき、家を建て、結婚式を挙げ、「冬の蝉」があり…それら全てで、心も体も繋がり合うさまをこれでもか!!と見せつけられるのですが、不思議とエロくなく(たまに挿入される番外編はただのエロです)、むしろ膨大な台詞・モノローグで展開していくストーリィの虜になります。
さらに、男同士で愛し合う二人に対する周囲の人々の関係がリアルで良いです。交際を猛反対する兄に対し香藤への思いを吐露する岩城の土下座シーンとか忘れられません。浅野、吉澄、宮坂、小野塚といった、二人の心を揺らす脇役も皆個性的で、邪魔に感じないんですよね。
この漫画のそこここに刻まれた過去の罪業は許されませんが、それはあくまで化粧であって、本質というか素材は非常に優れています。BLの底辺を拡げた作品には違いありません。僕もはじめて春抱を知ったのは何を隠そう「ランク王国」でしたから(9巻の時です)。僕の漫画人生の十傑入りは間違いないです。