素敵な呪文

感想文

何かいいものを求めてます。それらの所感を投げ込みたいときに使う場所です。
2008年12月にいったん終了。1年後の12月に、コンセプトを改めて再開してみました(過去記事はそのままです)。よろしくどうぞ。
書店員を経て出版社に勤める漫画スキー(特にBL)。
その他頻出ネタとしてはTM NETWORK、90年代ビーイング、ジャニーズなど。
時事ネタも何かどうしても不特定多数に向かって叫びたいような出来事があれば書いています。


当世白浪気質/杉山小弥花

当世白浪気質 1 東京アプレゲール (ボニータコミックスα)当世白浪気質 2 美少女は悪党の愉しみ (ボニータコミックスα)当世白浪気質 3 美少女こそ我が悦び (ボニータコミックスα)
 確か読書メータで見かけて気になったはずの漫画。最初は絵が苦手で読むのを躊躇ったのですが、昭和20年代という戦後間もない時代設定はこういう漫画だと珍しいんじゃないかと思って買いました。ボニータコミックスなんて初めて読んだよ……。
 が、やっぱり面白かった!! 期待を上回る内容でした。風来坊に見えて実は様々な影を背負った色男・トラとそれに惚れ込む千越のコンビは夫婦探偵のようで、小気味よいかけあいはこの漫画の見せ場とも言えます。トラの生業上、美術品や骨董の造詣が多く見られるためギャラリーフェイクっぽい要素もあり、知的創造も充実していました。
 さらに、目まぐるしく変わる日本の様相を二人の関係に絡めて進む物語が良い。時期が時期だけに、時代考証が妄想では済まされず、どうしても扱いが難しくなってしまう戦後間際を、ヤクザ崩れと神格化された霊力少女というキャラクタで巧妙に見せています(作品に詳しいですが、当時はヤクザと新興宗教が巷を席巻していたそうです)。
 そう任侠世界の男たちがいい味を出してるんですよ。特に東一(腹黒)と麟太郎(豆狸)は女としての千越にも重要な関わりを持つ人物ですが、この二人大好きです。途中千越は東一とくっつけばいいのにと本気で思いました(笑)。麟太郎はまぁ、マスコット的な…三代目の大見得だけはイカしていたかな。うりゅっ。
 繰り返しになりますが、近現代モノが好きな方にも自信を持ってお勧めします。シベリア抑留から帰国した経歴を持つトラの台詞に表れる日本と諸外国の関係、日本人の在り方については一考でしょう(この辺が少女漫画ではなし得ない部分なのだと思います)。一冊が260頁以上とボリュームがありますが、焦らずじっくり隅々まで読んでいただきたい。